慶應義塾大学 看護医療学部 地域看護学 専任講師

研究について

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 私は神奈川県内の2市で保健師をしておりました。2市目で経験した外部委託で行う保健事業運営で得たコツを研究としてまとめたものがこのホームページでご紹介する内容です。
行政が行う保健事業において,今後も民間事業者と手を組み,業務委託によって,一層効果的・効率的な保健事業を展開する場面が増えていくことでしょう。
 行政保健師の方にはもちろん,自治体の事務職の方,他の専門職の方,自治体の保健事業(介護予防事業や特定保健指導,地域包括支援センターの運営なども含む)に携わっている民間企業の皆さんにも役立つ内容をアップしてまいります。

行政保健師が「委託」に関わる経験

 私が外部委託事業に関わることになったのは,市の方針で介護予防教室を外部委託で行うことが決まったからでした。行政保健師として自分が「直営」で保健事業を企画・運営・実施・評価という一連のプロセスを展開することには慣れていましたが,「委託」で市内の複数個所で同時に大勢の住民の方を対象とした事業を行うことは初めての経験でした。委託先の事業所にどのように関わったらよいのか,何より間接的にサービスを提供する住民の方にとって効果的な事業になっているのかを,どのように評価したらよいのだろうかと悩みました。
 当初,民間企業がどのような思いで行政の介護予防教室を受託しているのかも分からず,漠然とした不安を抱えながら事業担当保健師として運営に関わることになりました。
 このページを見てくださっている皆さんの中にも,自治体の方針で外部委託を行うことになったけれど,これで本当に良かったのか?委託した後はどの程度任せていいのか?そもそも「委託した」のだから,自分はあまり関わらなくていいのでは?・・・など・・・もやもやとした気持ちを抱えているかたがいらっしゃるのではないでしょうか。

外部委託事業に行政職員としての責任を持つこと

 私の携わった事業では,受託先の民間企業の方も行政の介護予防教室運営に携わるのは初めての経験でした。「初めての教室運営を,どんな感じで展開しているのかな?」と私が教室の見学に行くと,どの教室でもプログラムの内容に沿った専門講師を揃え,住民の皆さんとコミュニケーションを取りながら素晴らしい教室運営をしていました。さらに行政の事業として一定期間が終わり,自主グループ化する段階でも,自主グループ化した後のグループ支援にも関わってくれて,民間企業が住民の社会資源として機能してくれることに気づかせてくれました。
 私の心配は杞憂に終わり,本来「委託する」というのは,「直営」で行うよりも効果が上がる方法を行政側が責任をもって展開しなければいけないのだという学びを得ました。

こちらの内容詳細については,以下の論文をご参照ください。
石川志麻, 宮﨑美砂子, & 石丸美奈. (2012). 市町村保健師の委託事業を利用したマネジメント行為の特徴. 千葉看護学会会誌, 18(1), 77-85.
★フルテキストあり
http://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900116506/13448846_18-1_77.pdf

外部委託先事業者の思い

 参加者から評判が広まり,参加者募集日に定員を超える応募が来るようになりました。運動教室での体力測定結果もまずまず。けれど,事業者の方は何か私に遠慮している?ような感じが拭えませんでした。
 「何か改善したほうがいいことはありますか?」こちらから尋ねると,「実は…」と委託事業者スタッフから提案がありました。とても良い案です。「もっと早く教えてくれたらよかったのに…」と私は思ったのですが「仕様書に書かれていないことは出すぎた提案になるのでは,と思っていました」と言われ,ハッとしました。私が思っていた以上に受託事業者の方は行政へ遠慮があるのだと気づかされました。

こちらの内容詳細については,以下の論文をご参照ください。
石川志麻, 宮崎美砂子, & 石丸美奈. (2013). 市町村の介護予防事業における業務委託の現状と課題-A 県の業務委託実態調査からの示唆. 千葉看護学会会誌, 19(1), 45-53.
★フルテキストあり
https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900117473/13448846_19-1_45.pdf

行政保健師が委託事業に責任をもって運営する

 私は「直営」ではない教室の中で,自分が教室に出向いて行った時には参加している住民の方に教室の感想を聞いたり,参加者のアセスメント(体力測定などの評価測定など)の日には自分もスタッフの一員として住民の皆さんの状況を把握する機会を持つようにしたりするなどして委託事業の質の担保に関わろうと思いました。
 けれど,委託した事業なのに,結局行政職員がしょっちゅう事業に出向くのであれば「委託した意味がない」と上司の目に映ることも自覚していました。確かにその通りです。
 では,どうしたら委託した事業の質を向上させていかれるのか?
 どのようなポイントを押さえたら「委託」という形態の事業を効果的に運営できるのか?
 委託先の事業者だけでなく,自分の所属部署で委託事業をどのように見える化したらいい?
そのような疑問から研究に取り組んでおります。

外部委託を活用した市町村保健師のマネジメント行為評価指標の開発(2019/2/20Ver.)

 上記の動機から,私が博士課程で開発した指標です。主に市町村保健師の方が外部委託を活用するために必要なことを,行為レベルで記述しました。90項目あり,じっくり時間を取ってチェックしてもらいたい項目が満載となっています。
 自分の仕事の在り方を見直し,改善点を知るために,少し時間を取って取り組んでいただきたい項目です。
 自治体の保健事業を受託している民間企業の方は,この指標を見ていただくことで「事業担当者(保健師)に,こういうことをしてもらいたい」と具体的に示すツールとしてお使い頂けるのでは,と思っています。
 ダウンロードしてご活用ください。ご使用後のご意見を頂けますと幸いです。なお,個人以外でのご使用の際にはご連絡を頂けますようお願い申し上げます。

指標案(2019PDFダウンロード)

なお,本指標は第73回日本公衆衛生学会総会にて一部発表しています。
市町村保健師が外部委託を活用するためのマネジメント行為評価指標項目の検討(会議録)
Author:石川 志麻(千葉県立保健医療大学 健康科学部看護学科)
Source: 日本公衆衛生学会総会抄録集 (1347-8060)73回 Page573(2014.10)

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